DB103のKleines Modellmuseum Ep. IV

こちらでは模型鉄道以外の模型記事を書いています。模型鉄道関連は本店にお越し下さい。

ドイツ貨車分類 「Verbandsbauart」 について

 このところVerbandsbauart A2の紹介が続きましたが、今回はその「Verbandsbauart」について簡単に紹介したいと思います。


 DRG G München G München 64 988 (Fleischmann 5365 K)
 以下の写真ですが、特記なしはDB103のコレクションです。

 

 ドイツ最初の鉄道は、1835年に開通した私鉄Ludwigseisenbahnですが、これが成功を収めると、ドイツ各地に次々と鉄道が建設されて行きました。

 当初、起業家の手により建設が進みましたが、路線が長くなり多大な資金を要すること、また鉄道の戦略的重要性から、やがてドイツを構成する8つの王国の手に経営の主体が移って行きました。

 最初の鉄道Ludwigseisenbahnの車輌は、当時の鉄道先進国イギリスからの輸入でしたが、その後、国産化が進み、ドイツは世界有数の鉄道大国になります。

 ドイツは国家的事業として鉄道を発展させましたが、鉄道の統一は最初の鉄道から85年後の1920年までなされず、統一直前には、8つの王国邦有鉄道が独自に運営を行っておりました。(私鉄を除く)

 また車輌についても各王国が独自開発しておりました。

 この8つの邦有鉄道とは、プロイセンバイエルンザクセン、バーデン、ヴュルテンベルク、プファルツ、オルデンブルク、メックレンブルク・シュヴェリーンですが、何と言ってもプロイセン王国邦有鉄道が最大の規模を誇りました。

 そのプロイセン邦有鉄道は、19世紀の終わり頃、機関車、炭水車、客貨車などの車輌や、鉄道施設などの標準化を進めました。

 これらは、鉄道機械技術を担当した鉄道局長のMoritz Stambkeの指導の下で開発され、1/40の縮尺で作図されました。

 この標準化の思想は後々受け継がれ、ドイツの貨車開発のバックボーンとなりました。

 

 上記のように、ドイツの鉄道は各王国が独自の開発を行っていましたが、特に共通乗り入れの多い貨車において問題があったため、標準化が求められました。

 これを受け、1909年にドイツ国立鉄道協会(Der Deutscher Staatsbahnwagenverband、DWV)が設立され、代表的な一般仕様の貨車11種類について、標準化を行いました。

 標準図 (Musterblatt) A1~A11で制定されたこれらの貨車のことを、Verbandsbauartと言います。

 なお、この作業において、ドイツで最も車両が多く、かつ標準化の進んでいたプロイセン王国邦有鉄道の設計が11種類中、9種類も採用されました。

 これら1910年代に設計されたVerbandsbauartは、折しも勃発した第一次世界大戦の影響もあり、20万台が製造されたA10や、12万台以上が製造されたA2をはじめ、大量生産されました。

 戦時賠償で他国に渡ったものも多く、ヨーロッパの鉄道の一時代を築きました。

 Verbandbauartは、概して長命であり、車種にもよりますが、長いものは誕生から半世紀以上経った1960~70年代まで使用されました。

 更には、DB時代になって、A2やA10などの部品を使って新しい無蓋車や有蓋車が多数作られています。

 まさしくドイツを代表する貨車群と言えましょう。

 これらを簡単に説明したいと思います。

 

標準図 A1


 K.P.St.E. Onmk Hannover 48795 (Fleischmann 4895 K)
 こちらの模型はII d 3です。

 プロイセン王国邦有鉄道のII d 3に準拠した15t積みの2軸無蓋車です。

 ハンドブレーキの有無で1910年から約60,000輌が作られました。

 邦有鉄道 Omk - DRG O Halle - DB O 10

 

標準図 A2


 DRG 運用 私有貨車 Erfurt 544 076 P (Märklin 47895)

 今までの記事通り、15t積みの2軸有蓋車です。II d8に準拠。

 ハンドブレーキの有無で12万輌以上が作られました。

 邦有鉄道 Gm/Nm - DRG G München/G Kassel - DB G 10

※蒸気暖房配管装備のFakultativwagenは、DRG Kahlsruhe -DB Gh 10

 

標準図 A3


 DB RKmp 653 3 846 419-2 (ROCO 46492) DB エポック4まで使用されたのですね。

 2軸ボギーレール運搬車。II d8に準拠。

 積載荷重 35t、積載長 15m。全てハンドブレーキ付きで、1913-25年に約4,000輌が製造されました。

 邦有鉄道 Sml - DRG G Köln - DB SS 15

 

標準図 A4


 DRG R Stuttgart 22 716 (ROCO 47729) 

 2軸柵柱貨車。(低側無蓋車)II d 5に準拠。

 積載荷重 15t、ハンドブレーキの有無で1917-25年に約35,000輌が製造されました。

 邦有鉄道 Rm - DRG R Stuttgart - DB R 10

 

標準図 A5


 DRG H Ragensburg 25 755 (Fleischmann 481103)

 2軸ターンテーブル貨車。(平貨車)新設計。

 積載荷重 15t、2輌一組で長物を輸送するための旋回式の架台を装備。1912-25年に約8,000輌が製造されました。しかし、この方式は荷物を変形させるなど問題があるため、大型の平貨車に取って代わられました。

 よってAustaschbauart以降のシリーズでは、ほぼ試作のみです。

 旋回式の架台を取り外した車は、DRG X Erfurt - DB X 05になりました。なお、DRG X Erfurt - DB X 05には、G  München等からも多数改造されています。

 邦有鉄道 Hrmz - DRG H Regensburg - DB H 10

 

標準図 A6


 写真は、ほぼ同系のプロイセン II d 1 DRG O Schwerin 26 534 (Fleischmann 481103) です。
 入手時より標記が消されていました。

 2軸石炭車。II d 1に準拠。

 積載荷重 15t、ホイールベースハンドブレーキの有無で僅か3.3/3.0mしかない小型の貨車です。1913年から1924年まで約24,000輌が製造されました。

 邦有鉄道 Omk(u) - DRG O Nürnberg - DB O 11

 

標準図 A7


 DB Nürnberg 1898 (Märklin 46041)
 恐らくK Wuppertalの成れの果てだと思います。模型はレールクリーナーになっています。

 2軸天蓋ヒンジ付貨車。湿気を嫌う貨物(石灰等)を輸送。天蓋部にハッチが6箇所あります。II d 4に準拠。

 積載荷重 15t、ホイールベースハンドブレーキの有無で僅か3.3/3.0mしかありませんが、1918年以降、3.5mに拡大されています。1913年から1926年まで約5,000輌が製造されました。

 邦有鉄道 Km - DRG K Elberfeld 1930年以降 K Wuppertal - DB K 15

 

標準図 A8


 DRG V Altona 5 602 (Sachsenmodelle 16128)

 2軸小型動物用の家畜車。A2に類似。

 積載荷重 15t、1913年から1927年に約2,200輌が製造されました。

 邦有鉄道 Vemgz/Venmz - DRG V Altona 1937年以降 V Hamburg - DB V 14

 

標準図 A9


 DRG Gl Dresden 8 007 (Fleischmann 5309 K)  この車もA9ではなくて、Ce5かもしれませんが、資料がないためわかりませんでした。

 2軸大容量有蓋車。ホイールベース7mの大型貨車ですが、積載荷重はG Münchenと同じ、僅か15tです。ガラスなどの嵩張る荷物用に使用されました。プロイセンCe5、及びザクセンの車に準拠。

 1914年から1928年まで約5,600輌が製造されました。

 邦有鉄道 Gml - DRG Gl Dresden - DB Gl 11

 

 

標準図 A10


 DB Om 12 710 339 (Fleischmann 5129 K)

 2軸無蓋車。II d 2 IIIに準拠。コークス貨車と呼ばれますが、水に濡れてはいけないもの以外、何でも輸送できます。1980年代まで鉄道貨物の主力であった欧州の無蓋車の基礎となりました。

 積載荷重20t、1913年から1928年まで、何と20万輌以上!!が製造されました。これは一形式としては世界一の数字です。

 邦有鉄道 Ommk(u) - DRG Om Breslau/Om Essen - DB Om 12

 

標準図 A11


 DRG S Augsburg (Fleischmann 5236 07) Fleischmann社公式写真

 

 2軸レール貨車。Ce 143に準拠。側壁のない平貨車です。鋼製の支柱付。

 積載荷重15t、1911年から1922年まで、約3,000輌が製造されました。

 邦有鉄道 Sml - DRG S Augsburg - DB S 14

 

 以上、11種類です。

 

 見ての通り、模型鉄道でよく見かけるタンク車、ビール貨車はありません。

 これらは私有貨車だからですね。

 

 なお、ドイツの貨車分類としては、

 1920年代:Austauschbauarten in genieteter Ausführung リベット構造の互換設計

 1930年代:Austauschbauarten in geschweißter Ausführung 溶接構造の互換設計

 1930年代後半:Kriegsbauarten 戦時型

と続くわけですが、不思議なことにWeb上では、今回紹介したVerbandsbauartの資料が最も揃っています。

 逆を言うと他の区分の図面は簡単なものしかありません。

 実に不思議なことですね。

 今回参考にしたサイト

Güterwagen der Verbandsbauart  

Setbus - Dänische Eisenbahnen の中にあります。

見ての通り、デンマークの鉄道を取り上げた個人ページですが、はっきり言ってすごい。

Verbandsbauartの図面が全て揃っています。

Epoche II

こちらでも何度か紹介したDRG 時代の鉄道を取り上げたページ。ただすごいです。

Güterwagen der Verbandsbauart

Wikipediaのページ。こちらを見ればほぼわかると思います。

Modellbahnfrokler

ドイツ貨車を調べるなら必見です。DB貨車の1953年頃の図面集は圧巻です。

 

 なお、いつも通りですが、上記の記載には誤訳や間違いも多いと思います。

 生産量は資料によって記載に幅がありましたが、基本的にEpoche IIの数値を使いました。ただし、A10だけは一般的な20万台を採用しました。

 また当方、Cartensなどの素晴らしい資料を持ち合わせておりません。

 より詳しい情報をお持ちの方はぜひご教授賜りますよう、何卒よろしくお願い致します。

 

2021/8/11 記

 

 

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