西ドイツ国鉄 DB BR 140 貨物用電気機関車 167-8号機 (ROCO 43388)
今回は西ドイツ国鉄 DB の汎用貨物用電気機関車 BR E 40について紹介します。
BR E 40はドイツの電気機関車ではもっとも大量に生産されました。
BR E 40主要諸元
全長:16.49m、運転重量:83.0t、軸重:21t、動輪径:1.25m、出力:3,700kW、最高速度:100km/h(後に110km/h)
E 40は1950年、ドイツ連邦鉄道の技術委員会が決めた制式機関車の一つです。
E 94やE 44の後継の貨物機として作られました。
当初、DBは客貨両用の汎用機関車としてBR E 10 を計画したようですが、試作車001~005の運用試験の結果、一形式で対応するのには不都合があり、用途別の機関車を開発することになったようです。
このときに決められた機関車が旅客用B-B機 BR E 10、貨物用 BR E 40、近郊旅客用B-B機 BR E 41、重貨物用C-C機 BR E 50であり、共通コンポーネントを使用したため、どれも似たスタイルとなっています。
これらは何れも成功作となり、長年ドイツ国鉄の主力機として活躍しました。
なおBR E 40はBR E 10.1と、ギア比とブレーキ以外は、ほぼ同じ設計であり、外見上見分けるのは難しいです。
ただし、BR E 10.3の流線型ボディのBR E 40は製造されませんでした。
BR E 40は成功作であり、1957年から1973年までの26年間に、879両もの大量生産が行われました。
バリエーションとしては、近郊輸送用にWendezug(プッシュ・プルトレイン)運用可能としたBR 140.8(140 757~)と勾配線用に電気ブレーキを装備したE 40.11(後のBR139)があります。
1968年のコンピューターナンバー化により、E 40はBR 140となりました。
BR 140は26年の長きに渡り、製造されましたので、形態上も変化があります。
当初、雨樋付きでしたが、672から張上屋根になり、ドアやフロントガラスのゴム製のストリップに置き換えられました。
この改良は好評だったのか、672より古い車番だけでなく、E 10.1、E 10.3、E 41、E 50などでも行われています。
この点、日本の旧国で全く逆で、更新修繕において、張上屋根を雨樋付きに改造しているのは面白いですね。
また初期は前面下部ライトが前尾灯切替式の2灯でしたが、これも後には、前照灯と尾灯が別個に設置されるようになりました。
こちらも遡って施工されています。
その一方、確か両形態ともに旧のままの機種がいたのも面白いです。
塗色も初期は酸化クロムグリーンでしたが、タルキス/ベージュ塗装になり、更にOrient-Rot、Vehrkehrs-Rotに変わりました。
こちらについても、旧塗装のまま(当然塗り替えられて)残った機種があるのが、いかにもドイツ機らしい話です。
このような長年活躍したBR 140ですが、後継機のBR 185の増備に伴い、DBAG線上からは2016年引退しました。
ただし、貨物会社の所属機にはまだ現役のものがあります。
他方、保存機の国ドイツですが、BR 140は僅か3両しか保存されていないそうです。(貨物会社の所有機を除く)
以上、Wikipedia 独語版 DB-Baureihe E 40 より引用、参照させていただきました。
それで、模型のBR E 40ですが、Modellbau-Wiki によりますと、ドイツの最多量産電機なのに、意外なことに恵まれていません。
と言うか、欧州型の宿命である、既存製品があると、新製品がなかなか製品化されないという罠に落ちている典型かもしれません。
古いのはTRIXとFleischmannですが、優に50年前以上のモデルですので、私は見たことはありません。
次に古いのはMärklinです。
同社は1965年原型車、1980年張上屋根、そして2009年原型車、2010年張上屋根を出しているようです。
多数のバリエーションがあるようですが、どれも数が少ないようで、中古はまず出回らないですね。
その次がROCOですが、こちらも1977年張上屋根、1993年原型車、そして2010年張上屋根車があります。
こちらも生産回数が少ないようで、特に私は2010年製品については一度も見たことがありません。
それからLiliputが1990年に原型車を出しましたが、発売直後に倒産したため、殆ど出回りませんでした。
これ以外にはPikoが2017年になって原型と張上屋根の両方を模型化しておりますが、こちらも見たことがありません。
というわけで各社から発売されている割には、市場には殆ど出回っておらず、中でも一般的な張上屋根車は相当珍しいということはご理解いただけると思います。
それで、こちらで紹介する原型車は、上記の通り、ROCOにとって2代目製品になります。
1993年に完全新規製品として発売されたBR 110.1(110 233-4)のバリエーションモデルとして作られました。
構造が完全に一新され、旧製品の部品は一切使っておりません。
特に下回りが現在まで続く同社のスタンダードの構造となり、大幅に改善されたように感じます。
スタイルも大分変わりました。
初代製品はなにか痩せぎすと言うか、あんまり似ていないように感じますが、こちらは大分感じが変わったように思います。
細部はよく出来ていますね。
私は取り付けていませんが、運転室入口の手すりが金属製の別パーツなのは破損防止のため、アドバンテージが高いと思います。
以前のパンタはゴツかったですが、こちらは大変繊細です。
レタリングもきれいですね。
本製品で特筆すべきは動力装置です。
普通、全く同じ形状のE 10.1とE 40はレタだけ変えて製品化することが多いのですが、こちらは用途に応じ、ギア比を変えてあります。
これは同時期のDR 143/112と同じですが、稀有な例と言えましょう。
走りは軽いですね。
なおこちらのモデルは1994年に欧州へ旅行に行った義理の妹が、偶然見かけたオーストリアの模型店で買ってきてくれたものです。
とてもうれしかったです!
それで私的には、ROCOのBR 140の最大の欠点は、時代設定です。
1957年~1973年までの長きに渡って製造され、2016年まで約50年間、使用されたBR 140は、その生涯の殆どが雨樋なしのスタイルであり、雨樋付の原型スタイルは、ごく僅かな例外を除くと、いいところ1970年代前半までの僅かなものでしかなかったはずです。
これでは牽かせるものは限られますし、Wundezug運用や重連運用は出来ません。
ですので、いくら模型としての出来が良くても、使いみちが限られたものになってしまいます。
同じことはメルクリンや一番新しいPikoにも言えますけど。
ROCOはE 41も原型機ですし、Avmz 207も原型で、何れも使いみちが限られます。
はっきり言って欧州のメーカーはエポックIVが嫌いなのですね。
でも、幅広く使える方が重宝するはずなのに、なぜそう考えないのか、私には全く理解できません。
実際、ROCOのBR 110.1/140はバリエーションモデルがエポックIIIしか出せませんでした。
これが一般的なスタイルならば、色違いが4種類出せるのですけど。
こちらの仕様で一般的な雨樋のないスタイルは、なんと約四半世紀後の2014年まで発売されませんでしたから、出来が良くない旧製品→こちらも入手難ですが……を充当するしかありませんでした。
ということで、BR 140については実車の保存車も少ないのと同じように、使える模型が殆どないという悲惨な状況になっています。
1994/6/11 入線
2019/1/25 記
2019/12/4 再録
2020/5/30 写真及び文章 全面更新
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