DB103のKleines Modellmuseum Ep. IV

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西ドイツ国鉄 準急用客車 Eilzugwagen Verwendungsgruppe 52 (ROCO 43680,43681,43682)

 過去記事の再録です。
 
 今回は1950年代の初め、ドイツで初めて量産された26.4m車である、Eilzug(準急列車※)用客車Verwendungsgruppe 52を紹介したいと思います。
 Verwendungsgruppe 52は戦後、UICが定めた新しいX規格の客車に準拠して、DBが製造したEilzug用の鋼製客車で、現在に至るまで標準となっている全長26.4mが初めて採用されました。
 
※正式な訳は不明。
 
 車体構造や窓なども似ていますが、UIC-Xとは異なり、ドアは両端及び中央部に設けられました。
 この構造から"Mitteleinstiegwagen"と呼ばれることもあります。
 またUIC-Xとは異なり、室内は開放式でした。
 1951年から総計850輌弱が製造されました。
 この数字はn-Wagen (Silverling) 5,000輌、UIC-X 3,000輌と比べるとずっと少ないです。
 
 こちらによると、主要形式と形式名称の変遷は下記の通りとなります。
 
1/2等車BC4ymg(b)-51 → AB4ym(b)-51 → ABym(b)411 → AByl(b)411 253輌 
2等車 C4ymg(b)-51 → B4ymb-51 → Bymb 421 → Byl(b)421 322輌
制御2等車 C4ymg(f)-51 → B4ymf-51 → Bymf 436 → Bylf 436 52輌
制御2等/荷物車 CPw4ymgf-51 → BPw4ymf-51 → BDymf 456 → BDylsf 456 / BDyl(b)458 29輌
制御2等/荷物車 CPw4ymg(f)-54 → BPw4ym(f)-54 → BDymf 457 → BDylf 457 / BDylb 459 137輌
半室食堂車 CR4ymg(b)-51 → BR4ymb-51 → BRymb 446 → BRyl 446 35輌 
 
 なお型式名ですが、~1956年 → 1956年~ → 1968年~ → 1976年~となります。
 
 またWikipediaによると1961年にPw標記は、Dに変わっているので
 
→ BPw4ymf-51 → BD4ymf-51 → BDymf 456
→ BPw4ym(f)-54 → BD4ym(f)-54 → BDymf 457
 
が正しいと思います。
 
 Eilzugwagen用客車としては最後の形式となった52年形式は、2等/半室食堂車 BRyl 446を除き、主にローカル線で使用され、1990年代に引退しました。
 
 同時期に製造された日本の43系などと比べると、ノーシル・ノーヘッダーで、サッシ窓装備というずっと進歩した形状になっています。
 上記のHPにはLichtstahlとありますが、軽量構造だったのでしょうか?
 
 それでVerwendungsgruppe 52で特徴的なのが制御車です。
 現在ではだいぶ電車(BR 425/426)が入っているようですが、つい先日まで、ドイツでは機関車牽引が一般的でした。
 しかし、機関車は終着駅で付け替えしなくてはならず、手間を要していたことから、主としてローカル、近郊運用において、蒸気機関車の時代から推進運転が試みられてきました。
 推進運転にはバッファ+ネジ式連結器が有利だったのかもしれません。
 このあたり、詳しく調べたことはありませんが、戦前製のDonnerbuchsen(2軸客車)には推進運転客車(改造車?)がありますので、かなり以前から行われていたのでしょう。
 そんな中、初めから推進運転用制御車として作られたのが、このシリーズです。
 上記の通り、荷物室の有無を含め、引き通し線付きの制御車は総勢、218輌が作られました。
 最初に作られた制御/2等/荷物合造車です。
 両数的にはBD4ym(f)-54 → BDymf 457の方が圧倒的に多いです。
 残念ながらこの両者の違いはわかりませんでした。
 なお、ROCOからは本車のタルキス/ベーシュ塗装がBDmf 457として発売されていますので、外見上の差異は少ないのかもしれません。
 
 当初、制御車は3軸Umbauwagen 2輌の組み合わせで使用されたようです。
 3軸車2両で26.4mとなるのですね。
 機関車としては、BR 23、BR 78、V 160、E 41などが使われました。
 
 電機やDLは引き通し線を通じて制御したようですが、蒸機の場合は、制御車に機関助手が乗り、ブレーキ操作だけを行ったとあります。機関車との連絡は電話で行ったようですね。(Wikipedia Baureihe 78の記載)
 
 何れにしてもこの推進運転列車Wendezug(日本でよく言われるPendelzugはスイスでの呼び名だそうです)は、本形式から本格的に開始され、続くn-Wagen(Silberlinge)で全国に広がったように思います。
 現在でも、BR 245+2階建て客車の運用が見られる他、200km/h運転のIC運用もあるようです。
 
 それでHO模型ですが、古くからROCO(Roewa)の製品が出ておりました。
 1/100長さではありますが、とても1960年代の後半から1970年代の前半の製品とは思えないくらいよく出来ています。
 しかし、Verwendungsgruppe 52はUIC-Xに比べると、あまり生産されることがなく、入手は難しかったと記憶しています。
 ちなみに私が一番最初に買った欧州型の客車は、西武池袋店にあったしぐなるはうすで買ったROCOの1/100のADmh 101とAm 203でしたが、たしかそのすぐ後に制御車を買いました。
 と言いますか、当時の私は制御車なるものの存在は知らず、荷物合造車と思っていましたが。
 
 それはともかく、ROCOが1985年に出したのがこちらの製品です。
 ROCOにとってはいわゆるユーロフィマ客車(UIC-Z、DBのAvmz 207等)に続いて発売したフルスケール客車でした。

 2等車 B4ymb-51 40 698 Esn  (44680)
 1994年12月4日入線
 
 ROCOのフルスケールは、この製品で基本的な構造が決定したようで、基本的な構造は、現在に至るまで引き継がれています。
 ユーロフィマと決定的に異なるのは、最初から集電可能な台車となったことです。
 欧州型客車の集電方式は、日本型と同様、それぞれの台車から集電する方式です。
 ただし、台車の止めビスにラグ板を取り付けて集電する日本型と異なり、台車がプラですので、片絶車輪の車軸に集電板を当てて集電しております。
 この方式は簡便ですが、反面、集電ポイントが全8輪のうち、4輪しか無いため、特に軽い車体の場合、集電があまり良くないこと、集電板が走行抵抗になってしまうという欠点があります。
 他社やROCO製品でもショートスケール時代を含め、それまでの台車は、点灯用の集電板を取り付ける必要がありましたが、この系列からは、予め取り付けられているKATOのような軸受を兼ねた金属製集電板と、絶縁車軸採用による8軸全輪の車輪集電となりました。
 これにより集電ポイントが倍増したため、集電性能は飛躍的に向上しました。
 また、台車軸受が金属になったため、経年使用による摩耗が改善され、かつ転がりも良くなりました。
 ただし、こちらは最初期製品のためか、車輪の転がり自体はあまりよくないですね。

 2等車 B4ymb-51 40 698 Esn  (44680)
 上と同じ車です。
 1995年5月23日入線
 
 台車の転がりはKATOやTOMIXでも永遠のテーマであり、同じように見える形でも、実際にはころがりが全く異なることがよくありますね。
 KATOで言えば、スハ43系リニューアル版の初回と、その後発売されたセットもの、オリエント初回と、その後の生産品、アメリカ型でも発売時期で、いいものと悪いものがありますし、TOMIXの初期の新集電は大変転がりが悪いです。
 ただしこれらはぱっと見、同じように見え、いいものと悪いものの区別は外見上からは難しいですね。

 1/2等車 AB4ym(b)-51 43 638 Esn (44681)
 1994年12月4日入線
 
 それ以外にも、車体側の集電板を台車側の電極(リン青銅板を曲げたもの)に接触する方法も本形式からです。
 配線に比べると確実性は落ちるかもしれませんが、コスト削減は明らかですし、台車を外すことも簡単です。
 欧州型の室内照明は高いので、私は入れたことがありませんが、そのうちこの集電機構を使って、LED照明をつけたいと思います。

 2等/荷物/制御車 BD4ymf-51 99 105 Esn (44682)
 1994年12月4日入線
 
 台車自体もそれまでの一体成型から、ブレーキ部品が別成形となり、ディテールが増しました。
 なお、集電方式の変更は客車全形式には及ばず、ドイツ形が中心のようで、ユーロフィマ及び類似形式(SBBのEW-4等)は、現在の製品でも従来の構造となっているようですね。
 
 塗装の方は現在と比べると、やや落ちるような気がします。
 また経年劣化は避けられず、傷んでしまったところもあります。
 

 塗色はグリーンで、屋根は灰色です。
 緑は資料によって、酸化クロムグリーンとしている場合と、フレッシュグリーンとしている場合があります。
 以前私はこの両者は同じ緑で、メーカーにより見解違いと思っていますが、実際には二種類あるようですね。
 酸化クロムグリーンは緑っぽくて、フレッシュグリーンは黒っぽいです。
 酸化クロムグリーンの方が後の時代となりますが、併用されている写真もよく見ます。
 さてそのどちらかかと聞かれますと、正直私はよくわかりません。
 
 1985年製品だけに、現在ほど塗装に対する知見がなかったのかもしれません。
 上記に紹介したHPによりますと、DBでは1963年の自動洗車機の導入により、屋根の塗装色を銀から灰色に変えたとありました。
 これからするとEp.3塗装でありますが、1960年代に入ってからの設定ということになり、ROCOのカタログに載っていたV 200 "Deutsche Bundesbahn"標記との組み合わせは微妙になりますね。
 
 何れにしても上記情報が本当とすれば、色の組み合わせとしては、フレッシュグリーン/銀、酸化クロムグリーン/灰が一般的となるわけですね。
 ただし、ドイツの事ゆえ、例外は多数あったと思いますが。
 このシリーズも全く同じ金型で、塗装や車番を変え、何度も再生産されています。
 現在のものは塗装やレタリングがグレードアップしていると思います。
 
 n-Wagenに比べると、少数派ですし、活躍した期間も短いですが、BR 23、78などの蒸機との組み合わせも可能な使用範囲の広いモデルと思います。
 
<付記>
 それまでROCOしかなかった Eilzugwagen Verwendungsgruppe 52ですが、その後、Piko及びMärklinから発売されたようです。
 Pikoはどこも出していなかった荷物室なしの制御車 B4ymf-51を模型化しています。
 残念ながら私は見たことがありませんが、ドイツのWebの記事では、新しいだけにROCOよりは良い出来である旨、記載がありました。
 
2018/9/28 記 2019/11/29 一部追記の上、再録

 

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