DB103のKleines Modellmuseum Ep. IV

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西ドイツ国鉄 DB 貨物用蒸気機関車 BR 50.40 4005号機(Märklin 37040)

 
 

 今回は西ドイツ国鉄DBの珍機種 BR 50.40について紹介します。

 

 

 

 

 BR 50.40はドイツ連邦鉄道DBが開発した貨物用 Franco-Crosti 蒸気機関車です。

 

 

BR 50.40主要諸元

 型式:1'E h2、バッファ間距離:22.94m、運転重量:90.6t、軸重:最大15.4t、過熱式二気筒、出力:1,133kW、ボイラー圧:16bar、最高速度:80km/h(前後進とも)、動輪径:1,400mm 

 

 

 Franco-Crostiと言うのは、この方法を開発した二人のイタリアの技術者の名前で、いわゆる廃熱回収式の機関車のことです。

 蒸気機関車はボイラーで石炭を炊き、その燃焼ガスの熱で水を加熱して蒸気を製造します。

 熱交換後の燃焼ガスは、煙突から排出されます。

 しかしながら、ボイラーの出口では燃焼ガスがまだ高温であるため、この廃熱を利用して、給水を加熱するものです。

 日本では、排蒸気を用いて給水を加熱する各種の給水温め器が実用されましたが、Franco-Crosti式は、排蒸気ではなく、燃焼ガスそのものを用い、より大規模に熱交換を行うもので、こちらのBR 50.40について言えば、蒸発伝熱面積が199.3m2と通常型の177.8m2よりも12%も増えております。

 BR 50.40は更に給水温め器MV-57も装備しています。

 蒸気機関車は熱効率が非常に悪いので、このような対策を講じて、少しでも熱を有効利用し、石炭の使用量を減らそうとした、省エネルギー機関車と言うことですね。

 

 

 Franco-Crosti機関車は、開発者の出身国であるイタリア国鉄が最も多く実用化しましたが、DBでは、BR 52の改造によるBR 42.90のテストにより、問題点があるものの、石炭の使用量削減効果が見られたため、1954年に大量に製造された1E制式貨物機BR 50の1412号機を改造、50 4001号機とし、テストを行いました。

 その結果、石炭22%節約の効果が得られたため、1958-59年に30両がBR 50から改造新製されました。(50 4002-4031)

 なお、そのうちの1輌(4011)は重油炊きに改造されております。

 

  

 まさしく時代を先取りした機関車でしたが……、そうは問屋が卸しませんでした。

 と言いますのも、肝心なエコノマイザーが腐食してしまうという問題が生じたからです。

 恐らくですが、発電設備などと異なり、蒸気機関車の場合、煙室以降の燃焼ガスの温度が低く、エコノマイザー入口では、酸露点以下になってしまったことが考えられます。

 石炭の燃焼ガスには硫黄分や窒素分が多く含まれるのも、不利だったでしょう。

 

 

 そのため、1961年にはすべての機関車が、エコノマイザーとサイド煙突の使用を中止したそうです。

 その後、エコノマイザーを耐食クロム鋼に替えたそうですが、コスト高を招き、省エネ効果が相殺されてしまいました。

 それでも根本的な解決にはならなかったため、全車が1967年までに引退しました。

 

 

 なお、殆どの車両が保存されていると言っても過言ではないドイツでも、このBR 50.40は一両も残っておりません。

 以上、Wikikepdia 独語版 DB-Baureihe 50.40 を参照、引用させていただきました。

 

 

 さてBR 50.40ですが、特殊な機関車のためか、長らく量産製品はありませんでした。

 ただし、ベースとなるBR 50は各社から発売されておりましたので、Weinert等より、コンバージョンキットが発売されており、私もいずれ組んでみたいと思っていました。

 そんな中、2011年に突然、Märklin/TRIXより、こちらが発売されました。

 まさか、こんなマイナー機種が出るとは思わなかったので、率直なところ、とても驚いた次第です。

 

 

 それで、37040は、2010年に発売されたMärklinとしては二代目のBR 50(37811)の派生製品ですが、転用しているのは下回りくらいで、ボイラー、キャブ、ランボードなど、殆どの部品が、新規製作となっております。

 

 

 車体の出来は、非常に繊細であり、昔のメルクリンとは違います。

 その分、扱いには注意が必要です。 

 

 

  特筆すべきは塗装で、完全つや消しではなく、独特の光沢ですが、高級感を醸し出していると思います。

 一方、仕方ない面もありますが、ここまで精度が上がってきますと、炭水車台車など赤いプラ製部品が浮いてしまいますね。

 これは塗装してやるとすごくよくなるとは思いますが、他と色調を合わせるのは難しそうです。

 

 

 このようにボイラーが二段重なっており、上は通常のもので、下が廃熱回収用(エコノマイザー)です。

 エコノマイザーが増えた分、2.1t重量増となりましたが、それに見合うだけの省エネ効果があったようです。

 

 

 燃焼ガスは、上の煙突から排出されずに、下部のエコノマイザーに導かれ、そして主ボイラー脇のサイド煙突から排出されます。

 

 

 サイド煙突の形状がよくわかりますね。

 ランボード下部に廃熱回収に伴う、配管類が増えているのがわかりますね。

 

 

 サイド煙突になった分、キャブに対する排煙が問題となりましたので、このようにキャブ上部にはウインドデフレクタを装備しております。

 

 

 もともとの煙突に蓋がしてありますが、この蓋は開閉可能だったようで、エコノマイザーの腐食により、1961年にはサイド煙突の使用が廃止されたとありますので、その時はこの煙突をまた使ったのでしょう。

 

 

 このあたりの質感は最高ですね。

 

 

 レタリングもきれいです。

 

 

 炭水車 2'2' T 26 です。 

  上記のようにサイド煙突の影響があって、炭水車にはDB UmbauのBR 03.10のような開閉式のカバーが取り付けられております。 

 

 

 実際にはこのカバーは破損しやすかったため、開けっぱなしだったようですね。

 

 

 

 模型のカバーは開閉可能です。 

 このあたりの部品は同じMHIのBR 03.10からの転用かもしれません。

 

 

 サイド煙突のアップ。

 前方視界の邪魔になりそうですね。

 

 

 キャブ上のウインドデフレクタの形状がわかりますか?

 

 

 

 後方から。

 キャブ自体はBR 50用ですね。

 

 

 ダイカスト動輪。

 ほんと今の動輪はシャープです。

 そうそう、Akiraさんの情報では、こちらのBR 50 4005号機は、先輪がスポークではなく、ディスクタイプだそうです。

 

 

 

 

 

  なお、BR 50はやや牽引力不足との情報もありますが(うちには2両ありますが、あまり感じたことはありません)、こちらはまだテストしていないのでわかりません。

 こちらはmfxフルサウンド機です。

 サウンドは通常のものと特に変わったところはありません。

 ただ、私のは音量がやや小さい気がします。

 

 

 さて、こちらはMHI製品です。

 ご存知の方も多いと思いますが、MHIというのはメルクリンインサイダークラブ専用製品で、このクラブに入っている人だけが購入出来るスペシャルモデルです。

 実際には、売れ残った場合等、一般に販売することもあるようですし、中古にも出回るので、会員でもない私も何両か所有しております。

 

 

 ちなみにBR 50.40は、かなり高価な商品でしたが、ちょうどユーロ安の時期と重なって、日本では5万円台後半で売られておりました。

 とは言うものの、私にはとても手の出るような代物ではなく、デジタルを始めたのちに、あるお店にTRIXが売れ残っていたものの、どうしようか迷っているうちに売り切れてしまいました。

 その後、某オクで一度だけ見ましたが、それっきりで。

 2015年、コンピューターナンバー仕様054 007-0(架空モデル、実車はそれ以前に廃車された)が発売されましたが、2015年からLippeではMHIの取り扱いをやめてしまい、他方、ユーロ高もあり、国内では7万円弱となってしまい、とても手が出るような代物ではありません。

 そういうわけで、ほとんど諦めかけていたのですが、偶然にも、中古で入手できた次第です。

 私にとってはかなり高い買い物でしたが、新品を買うことを考えればと思い、決心しました。

 

 

 特異なスタイルで目を引くBR 50.40です。

 実車は短命に終わりましたが、模型の世界ではいつまでも活躍させたいと思います。

 

 

 

 2015年6月15日 入線

 

 2015/6/19 記 
 2019/12/13 写真全更新、文章修正の上、再録
 2020/5/24 Blogger用に再構成

 

 

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